好きになんか、なってやらない
「今日は優しいんだ、玲奈」
「いつも優しいよ」
「嘘つけ」
肩にもたれかかった凌太は、私の相槌を聞いて笑っている。
そんな笑顔は好き。
「……何?」
気づけば、凌太もじーっと人の顔を見上げていて、ちょっとだけたじろいでしまう。
「すっぴん」
そしてニヤッと笑って一言。
「いちいち言わないでよ」
「久々。玲奈のすっぴん」
「凌太が化粧して会社に行けって言ったんでしょ」
「そうだけど」
私だって、できるならすっぴんのまま会社へ行きたい。
そうすれば朝も楽だし、いつでも目をこすれる。
でも一度化粧をすると、確かに少なからずすっぴんを人に見せるのに抵抗が出てきて……
「あまりじろじろ見ないで」
凌太のように、綺麗な顔立ちの人に顔をじっと見られるのは恥ずかしい。
「なんで?」
「なんでも」
言わなくたって察して。
心の中で文句を言い、凌太から目を逸らした。
だけど凌太はぎゅっと抱きしめてきて、
「でも、玲奈の顔、超好き」
そんな言葉を吐いた。