好きになんか、なってやらない
20章 未練
「玲奈、最近何かあったのー?」
仕事も終わりかけ。
隣にいた真央から突然の発言。
「え?何もないよ。なんで?」
「なんか元気ないように見えるから」
「……そうかな」
まさかの振りに、こっちが首をかしげてしまった。
何もないと思ってる。
だからいつも通りしているつもり。
けど……
「ま、何か悩んでるんだったら、いつでも話聞くからね」
「ありがと」
多分、自分では抑えきれてない不安が、少しだけ漏れているんだろうか……。
きっとそれは、美空さんのことだ。
「とりあえず大丈夫だから」
「ならいいけど」
でもだからといって、本当に何もない。
あれから、凌太の態度がおかしいと思ったこともないし
変わらず意地悪な愛情を向けてきている。
だからこれで不安になんかなったら、相手に失礼だ。
「終わった。私は帰るけど」
「ごめん、まだ無理ー。今日は終電クラスかも」
「そっか。頑張ってね」
「はーい」
忙しそうに手を動かす真央に別れの言葉を言いながら、モニター画面に映る「退社」ボタンを押した。