好きになんか、なってやらない
 
「仕事と恋愛……。
 あたしは仕事を選んだ。
 凌太に別れを告げて……」


(凌太、別れて)
(は?なんでだよ、いきなり……)
(……もう、飽きちゃったんだ。だからおしまい!
 今のあたしには、恋愛って邪魔なだけだから)


「一方的に別れを告げて、逃げるように凌太の前から姿を消したの。
 だから凌太があたしを恨んでて当然。

 だけどね……」


美空さんは、ぐっと手のひらを握ると、伏せていた顔を上げた。


「最初から、凌太を迎えに来るつもりだったよ。
 もっともっと売れて、事務所が文句を言えないくらい力をつけて……。
 そうしたら、誰にも邪魔させない。むしろカッコイイって言わせてやるって」


そう言った美空さんの顔は、今まで見てきたどの美空さんよりもカッコよかった。

モデルとしての顔立ちよりも、ずっと強い眼差し。
思わず怯んでしまう自分が分かった。


「だからあたしは、凌太を迎えに来たの。
 彼女がいたって関係ない。凌太が好きなのはあたしだよ」


スパッと言い切った言葉。

何も言い返せない。
自惚れてるの?とか笑えない。

美空さんの言葉には、力がありすぎた。



「これからあたしは、凌太を迎えに行く。
 そのために、あなたに一度断っておこうと思って訪ねてきたの」



ああ……
それでもなお、何も言い返すことが出来ない私は、なんて弱虫なんだろう……。
 
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