好きになんか、なってやらない
 
「止めないんだ?」


何も言わないあたしに、怪訝そうに私の顔を伺う美空さん。

バチッと目が合った瞬間、全身に力が入った。


「……止めてもいいんですか?」
「いいよ。けど、止まるつもりないけど」


泣きそうな顔も、懇願した顔も、
もうどこにもなかった。

そこにいるのは、戦いを挑んできた女の顔のみ。


「止めたって選ぶのは凌太だから。
 ま、さすがに今日の今日で、今から凌太んち行くとか言わないよ」


勝気に微笑む美空さんは、そこまで言うと席を立った。

それと同時に髪をかき分け、自然と耳元で揺れる小さなピアスに目がいった。


「これ、可愛いでしょ。凌太からもらったの」


私の視線に気づいて、ピアスを触りながら自慢話だろうか……。
そう思ったけど、美空さんの瞳は悲しげに揺らいでいて……


「付き合ってたときのだけどね。
 しかもなくして、一個しかない。

 それでも大切で、ずっと片方だけしてるんだ」


聞きたくもない、純粋な恋心だった。
 
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