好きになんか、なってやらない
「どうした?」
自分の家に帰るつもりだった。
平気なふりして、いつもの自分でいるつもりだった。
だけど自然と足が向かった先は
私の駅よりも少し奥の駅で……
「……なんとなく」
「どーぞ」
突然家に来た私を驚きながらも、凌太は抵抗なしに迎え入れてくれた。
「玲奈から来るなんて珍しいな。何かあった?」
「ううん……。べつに家に帰っても暇だったから」
「ふーん」
家に帰って、することがないなんていつものこと。
むしろその一人の時間が好きだったはずなのに……
今だけは、一人でいるのが耐えられなかった。
言葉のつけられない不安が、私の胸の中で渦を巻いている。
「飲む?」
「……うん」
定位置となったソファーに腰を下ろすと、冷蔵庫の前から缶ビールを向けられる。
飲みたい気分ではなかったけど、逆に飲んでしまったほうがスッキリするかもと思い、凌太から受け取った。