好きになんか、なってやらない
 
「おつかれ」という言葉とともに、合わさった缶。
冷たいビールが喉に流し込まれた時、自分の喉がカラカラしていたことに気づかされた。


「……ったく、らしくねぇなー」


何も言葉を発しない私に、凌太が呆れ声で文句を言うと、私の頭をグイと引き寄せた。

傾く体。
傍に感じる凌太の匂い。

ああ、なんか……
すごく落ち着く。


「話したくないんなら聞かないけど……
 甘えたければ、もっと甘えろよ」

「……うん」


久々に素直に頷けた。

私が美空さんのことで不安になっていることは話せないけど、凌太の家にまで来たのだから、ここは素直に甘えたかった。

力を抜いて、凌太にもたれかかり、
今、彼の傍にいるのは自分だと安心させた。


「凌太」
「んー?」


「……好き…だよ」


不安が自分を素直にさせたのか
両想いになってから初めて、凌太へ「好き」と言葉にして伝えた。
 
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