好きになんか、なってやらない
途端に襲ってくる絶望感。
さっきまで満たされていたはずのものが、大きな穴が開いてしまったかのように流れていく。
「っ……」
息苦しくて
信じられなくて
目の前のこのピアスを、窓から投げ捨ててしまおうかとも思った。
だけどそれをしても
ただ虚しさだけが残る気がして……
「まだ寝てるか」
「……」
シャワーから戻ってきた凌太にも
何も言えず、寝たふりを続けることしか出来なかった。
こっそりと開けた瞼。
凌太は棚の前に立ち尽くしている。
背中を向けているので、瞼をしっかり開けてその姿を眺めていた。
「……最低だな。俺……」
小さくつぶやかれた言葉。
その手には、さっきのピアスが握られていて……
凌太が今、
私と美空さんとの間で、揺れているんだと気づかされた。
違う。
揺れているんじゃない。
私が凌太を、引き留めているだけ。
「……ごめんな…」
最後に嘆かれた謝罪の言葉を聞いて
私は必死に、涙を堪えるだけだった。