好きになんか、なってやらない
「あー、やっぱ家とか抵抗ある?」
「はは、まあ……」
「じゃあ、一緒に飲み行かない?俺、前から伊藤さんと少し仲良くなりたいって思ってたんだよね」
「え……」
ああ、どうしよう……。
だんだんと、川辺さんへの抵抗が大きくなっていく。
今まで何も構えていなかったはずの人なのに、こうやってグイグイと自分に迫られると、いっきに苦手な対象と変わってしまう。
「伊藤さんが仕事終わるまで待ってるから。
だから気にせず、仕事続けてて」
「いや、あの……」
そもそも、行くなんて言ってないし!
飲みに行ったところで、絶対にそのまま家に誘うのだって目に見えてるし!!
「すみません、私……」
「れーなーちゃんっ」
フロアに響く、明るい声。
ハッとして顔をあげると、なぜかそこには、岬さんがいた。
「まだ仕事してるんだって?
思わず迎えに来ちゃったよ」
「岬さん……」
「あれ?川辺さん、どうしました?」
能天気な声を出しながら、川辺さんの存在に気づいた岬さんは、首をかしげながら私たちのすぐ傍まで寄ってきた。