好きになんか、なってやらない
 
「え?なんで泣いてんだよっ……」


最悪にも、涙がこみ上げ、言葉はそれ以上出てこない。

違う。
泣きたくなんかない。

どこ行ってたの?
なんで嘘ついたの?

舐められないように、強気でいかないと……。


「れーなっ」


グイと引かれる体。
ふわりと包み込まれる温もり。

何も言わずにただ泣きじゃくる私を
凌太はしどろもどろに抱きしめた。


温かくて
優しくて
何一つ変わってない凌太の温もり。


この腕を信じてる。
私を守ってくれる大きな手も胸板も
全部が今の私にとって信じられる証だった。


けど……



「っ……」



途端にかすめる鼻先を通る匂い。


私の嫌いな匂い。

甘くて…
苦手で……




「離してっ……」




美空さんの香水の匂いだ。

 
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