好きになんか、なってやらない
「玲奈……?」
押しのけられた凌太は、目を丸くして私を見つめている。
息が勝手に上がって、たくさんの感情が入り混じった何かがこみ上げてきた。
「嘘つき……」
「は?」
泣いてしまいそう。
だけど今は泣きたくない。
すでに目元まで浮かび上がった涙を必死に堪え、凌太を見上げた。
「どこに……行ってたの?」
「だから会社に……」
「そんな甘い香りをさせて?」
「え………っ!?」
ぽかんとした表情が、いっきに焦りの表情へと変わっていく。
私の言葉の意味を理解したのだろう。
そんな凌太の表情を悟って、なぜだか頭が冷静になっていく。
大丈夫。
信じてる。
そんな言葉は、もう必要なんかなくて……
「ピアス……美空さんに渡せた?」
「っ……。玲奈、話を……」
「触らないで!!」
伸ばしてきた手を跳ね除け、一人玄関へと向かった。
後ろめたさがあるのか、凌太は追ってくるけど、必死さは伝わってこなくて……
「バイバイ」
最後の最後、私は笑って凌太に別れを告げた。