好きになんか、なってやらない
 
「……へー。そう言われたの?凌太に」
「直接言われたわけじゃないですけど……でも……」
「でも?」

「ピアス。いまだに持ってたみたいです。美空さんの……。
 そして私に嘘をついて、今日は美空さんに会いに行ってました」


今朝、あったばかりの出来事。

さっきまで泣きそうでたまらなかったのに、今となって湧いてくる怒り。
呆れたように事実を伝え、押尾さんの反応を待った。


「ふーん……。それで玲奈ちゃんは、のこのこ負けを認めてきたってわけだ」
「なっ……」


予想以上の毒舌。

嫌味たっぷりの返しに、カァッと頭に血が昇った。


「だってそうだろ?本人に直接言われたわけでもねぇのに、勝手な憶測働いて……。
 うじうじ勝手に負けて、振られた気分でいるなんて、ただの負け犬だ」

「っ……」


悔しい……。
けど、何も言い返せない。

押尾さんの言っていることは、そのままだ。

私は結局、凌太の言い分さえ聞かずに、部屋を飛び出してきたんだ。
勝手に悲劇のヒロイン気分を演じて……。


「俺が凌太から聞いていた玲奈ちゃん像は、そんなんじゃなかったはずだけどな」

「え……?」


押尾さんは、煙草に口づけると、赤い火をともして、大きく煙を吐いた。



「玲奈は凛として強くて……
 誰の意見にも揺らがない、真っ直ぐな女だ。

 ってな」

 
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