好きになんか、なってやらない
「岬……」
「川辺さんと玲奈って、仲良かったでしたっけ?」
「……」
天然なのか、それとも牽制なのか……。
わざとそんなことを言いながら、私の肩にポンと手を置いた。
イラッとするはずのその行動に、なぜか今は跳ね除ける気がしない。
「それとも、川辺さんも玲奈を狙ってたり?
だとしたら、俺を相手にすることになりますけど」
少しだけ目を細めて、喧嘩腰の投げかけ。
岬さんが言うと、物凄く皮肉に見える。
「っ…んなわけないだろ。
遅くまで残ってるからちょっと声かけただけ。
俺は別に、そんな地味な子、興味ねぇから」
本人目の前にして、その言葉。
地味な子……。
それは否定しない。
だけど興味ないって……。
ついさっき、私にたいして、仲良くなりたいとかなんとか言ってなかったっけ……。
「じゃあ、俺は先に帰るから。お疲れ」
「お疲れ様でーす」
そそくさと退散するように去っていく川辺さんに、ひらひらと手を振る岬さん。
突然降ってきた嵐が、いなくなった気分だ。
「玲奈、今本当に………って無視!?」
「仕事の邪魔です。あと少しで終わるんですから」
「はあ……」
川辺さんが背を向けた瞬間、私が向き直ったのはパソコン。
岬さんの相手までする暇はない。