好きになんか、なってやらない
 
予想外の言葉。
凌太からそんなふうに思われていたなんて知らなくて、トクトクと胸が高鳴っていった。


「前に飲みに行ったとき、俺からも言ってやったんだよ。
 本当はまだ、美空に未練があるんじゃねぇのか?って。

 けどアイツは、一切動揺しないで、玲奈という女が好きだって言ってたけどな。
 強くて飾らなくて、ちょっとしたことでもへこたれない女が……って。

 だけど今の玲奈ちゃんは、そんな女と正反対じゃねぇか。
 そりゃ、凌太に振られるわ」


初めて聞かされた、凌太と押尾さんとの会話。

その言葉が、自分のバカさを気づかせていく。


ちょっとしたことでもへこたれない、か……。

そんなことない。
本当はいつも、少しの変化でビクビクしてた。

だけどそれを見せないのは、相手に負けるのが嫌だったから。
相手になめられることを、自分が許せなかったから……。


いつだって、勝負していたのは自分だったんだ。


それなのにいつの間にか、自分に負けて、願望ばかりが募ってもがいていて……。



「……確かにこんな私じゃ、凌太に釣り合わないですよね」



今までの自分を
蹴り飛ばしたいくらい、恥ずかしくなった。
 
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