好きになんか、なってやらない
怯みそうになったのも事実だった。
だけど負けたくない、という気持ちのほうが大きかった。
「突然すみませんでした。
お仕事頑張ってください」
最後まで言い切って
美空さんへと頭を下げた。
心臓がバクバクといってる。
だけどスッキリとした気持ち。
ただの負け犬の遠吠えと思われても、今の自分に後悔はなかったから……。
「待って」
そんな私の背中に、引き留めの声がかかった。
その声とともに振り返ると、じっと私を見つめる美空さん。
「あたし、あなたに一つ嘘ついてたことがあるの」
「え?」
予想外の言葉。
首をかしげながら、次の言葉を待った。
「このピアス、凌太にもらったって言ってたけど……
本当は違う。
これは、母の形見だから」
「……え…?」
まさかの事実に、さらに意味が分からなくなった。