好きになんか、なってやらない
「じゃ、あたしは仕事に行くから。
もう用はないんでしょ?」
「あ……は、い……」
さらりとなびかせた髪。
それと同時に、きらりと光った滴。
それを涙だと理解するときには、もう美空さんの顔に涙は似合わない顔つきになっていて……
「あたし、アンタみたいな女、大嫌いだったの。
何も努力もしないで、愛されるのが当たり前だと思っている女」
「……」
「けど……
怖気ず、喧嘩ふっかけてくる女は嫌いじゃないわ」
「美空さん……」
それだけ言うと、美空さんはふんと笑って私に背を向けた。
彼女と凌太の間に、何があったのかは結局分からない。
ピアスを返した本当の理由も
その先に何があったのかも
結局何一つ分かってない。
けど……
「負けたくない」
まだまだ自分にはやらないといけないことがたくさんある。
背を向ける美空さんに、自分も背を向けて走り出した。