好きになんか、なってやらない
最終章 君が好き
「話は終わったのか?」
「押尾さんっ!……はい、ありがとうございました」
美空さんと別れてスタジオから出ると、煙草を吹かしながら壁にもたれかかっている押尾さんがいた。
「どうだ?勝てたか?」
「それは分かりません。
勝敗を決めるのは、凌太ですから」
たとえ私がどんなに強気に美空さんに言いきったって、凌太の心が彼女に向いているなら勝ち目はない。
「だけど、思いきり、売られた喧嘩を買ってきました」
「……そうか」
先に宣戦布告をしてきたのは美空さんのほう。
何も言えなかったあの時。
だけど今日は、言いたいことを全部伝えられた。
「それじゃあ、私は帰りますね。
ありがとうございました」
最後に深く頭を下げて、押尾さんへと感謝の気持ちを伝えた。
彼がいたから、自分のバカさに気づけた。
物事を、ストレートにぶつけてくる押尾さんだったから……。
「玲奈っ……!!」
頭を上げる一歩手前。
突然聞こえた声。
まさかのその声に、驚いて顔を上げた。