好きになんか、なってやらない
 
(お前、またフラれたんだって?)
(なんで知ってるんすか……)
(その張本人が、俺のとこにいるんでな)
(は?)
(このまま、可愛そうな玲奈ちゃん慰めて、俺のモノにしちゃおっかなー)
(なっ、ふざけんなよ!!)
(お前が止める権利はないだろ。
 フラれて、何も追いかけることもできねぇ身のくせに)
(っ……)


(お前なー。下手にプライドが高すぎんだよ。
 たまにはみっともねぇくらいあがいてみろ。
 本当に大事なもんなら、プライドなんかくそくらえで必死に捕まえておけ)


説明された、二人の出来事。

まさか、そんな電話がされていたなんて……。


「普段、自信家なくせに実はすげぇ臆病なんだよコイツ。
 去る者追わず、来る者拒まず人生送りすぎて、去ってく人間追いかけらんねぇの」


押尾さんは、ハハッと笑って新しい煙草に火をつけた。

凌太はバツが悪そうにそっぽを向いている。


「だから、本当に玲奈ちゃんのこと、もういいって思ってんなら、俺がこのまま本気で口説くぞって言ったの。
 力づくでもな」


そう言って、目を細めて私を見下ろす押尾さん。

まるで獲物を捕らえるような、獣の瞳だ。
ドキッとするというより、ゾクッとする。


「押尾さんは冗談で言っているように見えて、本気でするから……。
 だから慌てて、玲奈のもとに来たんだよ」


ようやく発した凌太の言葉は、やっぱり少し拗ねてるみたい。


押尾さんの前での凌太は、完全に子供のようだ。
 
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