好きになんか、なってやらない
「そりゃ残念だ。
俺も結構玲奈ちゃんのこと、気に入ってたんだけどなー。
その強気な瞳とか」
「だからそんな目で見ないでくださいよ!」
再び、二つの鋭い瞳がじっと私を捉えると、グイと凌太のもとへ引き寄せられた。
「へいへい。俺はお邪魔だってわけね。
仕事するかー」
両手を大きく伸ばし、背筋をピンと張る押尾さん。
めんどくさそうに私たちを見るけど、そこに彼なりの優しさがあったから仲介に入ってくれて……
「押尾さん」
「んー?」
「ありがとうございます」
それを感じていたのは凌太も同じで
真っ直ぐと見つめて、お礼を言っていた。
「……お前がそんなだと、気持ちわりぃ」
照れからなのか、押尾さんは笑いながら一言そう言うと、ヒラヒラと手を振って一人スタジオの中へと入ってしまった。
取り残された私と凌太。
流れる沈黙の中の気まずさ。
凌太は確かに、私を迎えに来てくれたけど
まだまだ真意は掴めていない。
離れるなと言われたって
凌太の気持ちは聞いてないから……。
「玲奈」
「……何?」
「ごめんっ!!」
凌太は、私に向かって、深く頭を下げた。