好きになんか、なってやらない
そんな神的な存在に口説かれている私と言えば……
伊藤玲奈(いとう れな)、26歳。
ごくごく普通のオフィスレディ、総務課。
人よりちょっと、冷めているというか、毒舌とも言われる。
そんな私を見かねて、気づけばさっきまで真後ろでごちゃごちゃ言っていた岬さんは、すでに姿はもうなくて、私も気にせず業務を続けた。
「お先失礼します」
「おつかれー」
一通り仕事を終えて、周りの人に挨拶をしてから席を立った。
「玲奈、今帰り?一緒に帰ろうよ」
「あ、うん」
それと同時に、隣に座っていた、同期の山下真央(やました まお)に声をかけられ、一緒に帰ることにした。
真央がパソコンを閉じるのを待ちながら、ふと周りを見渡す。
遠く離れた場所には、さっきまでのちゃらけた表情とは一変した、まじめな顔の岬さんがデスクに向かっていた。
ああやって、仕事以外でも真面目だったらいいのに……。