好きになんか、なってやらない
「え、ちょっと、どこ行くの!?」
黙ってしまった凌太は、私の腕を引っ張ってズカズカと歩き出した。
怒らせた?
でも怒るようなこと?
凌太は無言のままで、駆け足になってしまいそうなほどの早歩きで私を引っ張っていく。
頭にハテナマークばかりが浮かんで
前と凌太を交互に見ながら、ただ歩かされていた。
「ねえ、ほんとどこに連れてくつもり?」
「俺んち」
「え?」
「お前、覚悟しとけよ。
俺をおちょくった罰」
悪魔のしっぽが見えそうなほどの、意地悪な微笑み。
まったく意味が分からなかったその言葉に
だんだんと状況を察していく。
「……帰る」
「帰らせない」
「いや、無理だから」
「大丈夫。明日休みだし」
冷や汗をじんわりとかきながら、私の抵抗は虚しくズルズルと引っ張られていき……
「さーて、玲奈ちゃん。
心の準備はできたかな?」
「変態!痴漢!鬼……っ」
私の言葉はそこまで。
プライドの高い彼をいじめるのは、ほどほどにと、今日学ぶ。
「まだ休ませねぇよ」
「も……む、りぃっ……」
ああ、やっぱこんな男……
好きになんか、なってやらなければよかった。
~fin.~