好きになんか、なってやらない
 




「なんで朝シカトしたの?」
「え?あ……」


給湯室で、コーヒーを淹れていたらかけられた言葉。
振り返ると、そこには岬さんが立っていた。


「べつに……シカトしたつもりはありません」
「でも見てたでしょ?俺のこと」
「勘違いです」


明らかに勘違いじゃない。
だけど見ていたなんて、自分でも認めたくなくて、わざととぼけた。


「れーな」
「っ……」


後ろから包み込むように、背中から手を伸ばされた。


「……セクハラですよ」
「触れてねぇし」


岬さんの手は、体に触れることはしてないけど、台の上に置かれているので、完全に私は動きを封じられている。

だけど完全にセクハラだ。
なのにいつもみたいに、もっと強く突っ込むことが出来ない。


「ここ、会社なんですけど」
「見られたらヤバイね」
「私は被害者です」
「ただの社内ラブ」
「一方的ですけどね」
「今はね」
「……」


ああ言えばこう言われる。

いったいこの自信は、どこから生まれてくるもんだか……。
 
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