好きになんか、なってやらない
「お疲れ様でした」
8時を過ぎて、まだ残る人たちに声をかけて退社した。
今日は運悪く捕まることもなく、自分の業務だけを終えて帰れる。
もうすでに暗くなっている中、駅まで歩いた。
「ふぅ……」
いつものホームよりも、少し奥へと向かった。
なぜだかちょっとだけ疲れてる。
だからあまり人に会いたくないので、なるべく人がいないほうへ。
だけどふと顔をあげると、階段のほうで見知った影が目にうつった。
うわ……。
目に入った相手は、またしても岬さん。
だけど今日は、その隣に柿本さんもいたので、余計に絡まれたくない。
見つかりたくない一心で、近くにあった自動販売機の影へと隠れた。
「あーだりー」
「お前なぁ……これから女の子に会うってのに、そんな態度とんなよ?」
「分かってるって」
聞こえてきた二人の会話。
最悪にも、私が隠れた自動販売機のすぐそこで、二人は止まったようだ。
ってか……
女の子って……?