好きになんか、なってやらない
「おはようございます」
朝、いつも通り出勤して、いつもと変わらない朝を迎えた。
少し奥には、すでに岬さんがいて、仕事に打ち込んでいる。
こっちへ振り向きそうになったので、すぐにパッと目を逸らし、自分の席の近くにいる人たちへ再度朝の挨拶を交わした。
「おはよー」
「おはよ。真央」
真央もすでに来ていて、朝の眠気をかかえながらパソコンを開いている。
続けて私も席についた。
「珍しいね。今日は凌太さん、絡みに来ないじゃん」
朝のメールをチェックしながら、真央が岬さんへ視線を送りながらつぶやいている。
朝は必ず絡みに来ていた岬さん。
日課のように、私のすぐ傍に一度は来る。
だけど今日は、自分の席から動く気配もなくて……
「もう来ることはないんじゃない?」
「え?」
私は、パソコンから目を離すこともなく、一言そう答えた。
真央が納得してないように私を見ているけど、わざとその視線には気づかないふりをしてメールに返信をし続けた。
私は彼の本当の目的を知ってしまった。
だからきっと彼は、見込みのなくなった私のもとへは、もう二度と来ない。