好きになんか、なってやらない
 
「み…さきさんっ……」

「どこに行くんだよ……。
 お前ら何?こいつ、俺の連れなんだけど」

「ちっ、男と二人だったのかよ……。
 行こうぜ」


相手は男3人だったけど、迎えに来た相手が自分よりもはるかに背が高く、気迫のある存在だったせいか、それ以上絡んでくることはなく立ち去っていった。


さっきまで、危険信号を鳴らしてバクバクと鳴っていた心臓は、だんだんと落ち着きを取り戻していき、目の前の岬さんを見上げた。


「お前も無防備すぎ。何連れ出されそうになってんだよ」
「すみません……」


なぜだか謝ってしまって、怒る気になれない。

助けてくれたのは確かだ。
自分が非力だったのも事実だから……。


「え、っつか泣いてる!?」
「っ……泣いてないですっ」


恐怖からか、それとも安堵からなのか……
勝手に溢れてきた涙。


それを岬さんにバレて、慌ててくるりと背中を向けた。


もう私のバカ……。
岬さんなんかに、涙を見られるなんて……。


恥ずかしさと悔しさで、絶対に涙を見られるもんかと必死に堪えていると……



「あーもうっ……」

「えっ……」



途端に私の体は、温かい温もりに包まれた。
 
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