好きになんか、なってやらない
 
「そういうとこ、すげぇ反則」


後ろから抱きしめながら、耳元でぶつぶつと嘆く言葉。

全く意味が分からない。


必死に涙を堪えようとしたけど、
急に抱きしめられた驚きから、簡単に涙は止まってしまった。


なんで今、岬さんは私を抱きしめてるわけ……?


「……離してください」
「無理。今は思いきり抱きしめてたいから」
「なんですかそれっ……」


勝手な言い分すぎる。
抱きしめたいからって、相手に許可をとらずに抱きしめていいの?


「そんなことしたって、もう本性分かっちゃってるんですから靡きませんよ」
「いいよ。今は計画とかそんなんじゃないから」
「どういう意味ですか」
「本能のままってこと」


返ってくる言葉の意味は、ますます意味が分からなくて、反論する言葉も見つからなかった。


というか私、何素直に抱きしめられているんだろう。
こんな腕、さっさと振り払ってしまえばいいのに……。



「…………ごめん」

「え?」



振り払おうかためらいながらあげた手に、再度ストップをかけた言葉。

抱きしめる腕の力が、きゅっと強くなった。
 
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