好きになんか、なってやらない
 
軽く微笑んで言った言葉。

本心だし、いいことを言うのにツンツンしたくなかったから。


「バカ」とか「俺は御免だ」なんて言葉が返ってくるかと思ったのに
岬さんからが何も返事が返ってこなくて……



「無視ですか。つまらないですね」

「あ?ち、ちげぇよっ……」



シカトされたことにはイラッとしたので、つい冷静に突っ込んだけど、なぜか焦った返事が今さら返ってきた。


「お前のそういうとこ、すげぇ予想外でムカつく」
「いちいち予想されても困りますし」
「そうじゃねぇよ!」


いったい何が言いたいのか……。

もっと別の、何かを言いたそうに見えるけど、それ以上岬さんが何かを付け足す様子もなくて……


「凌太さん!二軒目、行きましょう!!」

「え?あ、ああ」


私たちの間に入ってきた、香織によって、その会話は閉ざされた。





「ねえ、なにげにイイカンジになってんじゃないの?二人」

「は?」


香織と岬さんが遠くなってから、後ろから突っ込まれた言葉。
振り返ると、ニヤリと笑っている真央がいる。
 
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