好きになんか、なってやらない
 
「イイカンジって何?」
「前より、玲奈のピリピリ感がなくなってるように見えただけ」
「そんなこと……」


ない、とは言い切れなかった。

明らかに、前より暴言を吐くようになったけど
不思議と心の中は、岬さんにたいする「迷惑」と言ったような感情はどこにもなくて……


「向こうが私のこと、好きでもなんでもなくなったからだよ」
「え?どういうこと?」
「……」


私の言葉に、真央は首をかしげている。



「真央ちゃんたちも行くんだろ?早くしないと置いてくよ」
「あ、待ってくださいー」


先輩から呼ばれ、慌てて答える真央。

だけど私は、二軒目に行くつもりもなかったので、


「真央、私はこれで帰るよ。十分飲ませてもらったし」
「え、そう?一人で大丈夫?」
「うん、平気」


どうやらタイミングを失って、一軒目で帰る組は、もうすでに帰ってしまったらしい。


だけどそれはとくに気にしない。
もともと一人で帰るタイプだから。


「じゃあ、またね」
「はーい、また来週」


私は真央にだけ別れの言葉を言うと、一人反対方向へと歩き出した。
 
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