好きになんか、なってやらない
揺らぐことのない瞳で、彼を見据え、
二人の間だけ空気が変わったようにさえ感じた。
ほんの少しだけ、岬さんの眉がピクリと動いて、パッと私の手を離した。
「冷静すぎてムカつく」
吐き出された不服な言葉。
そう感じるくらいなら、もうこれ以上関わらないでほしい。
「まだゲームは続いているんですか?」
私を落とす、という……。
「べつに。そんなのもうどうでもいいし。
っつか、バレた時点で絶対になびかねぇだろ」
「バレなくても好きになんかなりませんよ」
「嘘つけ。少しだけ動揺してたくせに」
「動揺なんかしてません」
「ふっ……。今、ピクッてなった」
「なってないっ」
「あ、敬語もなくなってるし」
「……」
うかつにも取り乱してしまった自分。
ハッとしたときには遅い。
岬さんは、私を見て、嬉しそうに笑っている。
「その顔。今は、玲奈の鉄の面が崩せるだけでいいの」
そう言って、さらに勝ち誇ったような顔で笑われた。