好きになんか、なってやらない
「ずいぶんと楽しそうなのな」
そんな私たちのもとに、別の声が入って来て、ハッとして振り返った。
「おつ。お前も休憩?」
「そー。眠くてたまらん」
大口を開けて、自販機に向かうその人は、岬さんと仲のいい柿本さん。
このオフィスの、華のツーショットが目の前に並んだ。
「バレて、怒らせたんじゃなかったっけ?」
「そう。けど、今はその怒られるのが快感」
「何変態に目覚めてんの?」
仲よさげに絡む二人。
でも会話のターゲットになっているのは、間違いなく自分だ。
私を落とすということを、岬さんは柿本さんにだけ話していたっぽい。
「あ、なんか俺まで敵対視されてる?」
「……べつに、そんなことありません」
じっと見ていたせいか、それを睨みととらえた柿本さんは、苦笑しながら私を見返した。
そんなことない、と言ったけど、正直柿本さんも苦手。
だって柿本さんも、岬さんと同様、女にモテる部類だ。
もし何か言ってこられても、きっと私は、すぐに信用することは出来ない。
「っつか、外見た?雨すげぇんだけど」
「マジ?まあ、デスクに傘あるからいいけど」
「えっ……」
柿本さんの予想外の言葉に、私のほうまで声をあげてしまった。