好きになんか、なってやらない
 
傘の中で
彼を見上げ

柄にもなく微笑んで伝えた言葉。


お礼を言うのに、ツンケンするほど可愛くない女ではない。


トクトクと小さく鼓動が高鳴っていて
今だけは意地を張らずに、彼へと素直にお礼を言いたいと思ったから。


その言葉とともに、岬さんは振り返り
ほんの少しだけ目を見開いて私を見下ろした。


自然な身長差。

163㎝に7㎝のヒールを履く私は、自然と170㎝くらいとなる。
だけどそれでも生まれる身長差は、彼が180㎝近い背の高さをもっているから。


だけどその身長差が、気づけば埋められていて……



「っ……!?」



気づいた頃には、私の唇に添えられるように
岬さんの唇が重ねられていた。

 
< 66 / 301 >

この作品をシェア

pagetop