好きになんか、なってやらない
7章 トラウマな彼
「玲奈ー」
「嫌。帰る」
週末になって、真央と飲みに行った店の前。
今日こそは、気楽に飲めるかと思っていたのに、その願いは虚しく終わっていて……
「伊藤さんと山下さんじゃん!一緒に飲もうよ」
最悪にも、真央と二人で向かった店には、すでに先客。
先輩方々が、案内された隣の席で飲んでいた。
その先輩の中には、当たり前のように岬さんの姿があって、私はさっと進行方向を変え、店内の出入り口に。
それを慌てて、真央が追ってきていた。
「私、今究極に岬さんとプライベートで顔合わせたくないの」
「そんなの昔からじゃん。いつもと同じように軽くあしらえばいいでしょ」
「そういう問題じゃない。昔よりもずっと嫌」
あのキスをされて以来、さらに警戒心を強めた。
少しでも隙を見せれば、またキスをされてしまうんじゃないかと思ってしまう。
「お願い、玲奈。柿本さんがいるんだもん。一緒に飲みたいよー」
「……」
それを言われてしまえば、こっちも断りづらくなる。
真央は岬さんもカッコいいとよくはしゃいでいるけど、実は柿本さん派。
入社当初から憧れてて、彼氏のいない今では、憧れが恋心へと変わりつつある。
そんな親友の恋心でお願いをされてしまっては、こっちも断りづらい。
けど……
「なーに逃げようとしてんの?」
最低最悪。
私が決断する前に、さっと目の前に私の視界を塞ぐ男がいた。