好きになんか、なってやらない
 




「ふぅ……」


解散する方向になって、最後にトイレへと寄っていた。

完全に岬さんのペースに乗せられてしまった。

次々と進むお酒。
同じくらい岬さんも飲んでいるのに、向こうの顔色が変わることもない。

決してお酒に酔っているわけじゃないけど
なぜだか少しクラクラしている。


さ、あとは帰ろう。


このまま二軒目に行く話も出ているけど、当然私が行くわけない。
多分、真央は行くんだろうな。柿本さんが仕切ってる感じだったし。

だとしたら、周りにバレないようにそっと抜け出さないと。


そう思いながら、トイレから出た。


薄暗い店内の中、自分の席までの道を歩く。
途中、一人の男の人が前から歩いてきて、自然と端へと避けた。

癖でもあったけど、顔を合わせることなく、少し俯きながら歩く。
けど……




「玲奈……?」




予想外の自分の名前に、
反射的に顔を上げた。
 
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