好きになんか、なってやらない
 
顔なんか、あげなければよかった。
玲奈という名前に気づかなければよかった。


顔を上げた瞬間、
すぐそこで目を丸くさせ、私を見つめていたのは……



「………陽平…」



二度と会いたくない、
トラウマとなった原因の彼だった。


「よかった……。玲奈であってた」
「……」


一瞬にして顔が歪んだ私とは逆に
パッと明るい表情ではにかむ陽平。


どうしてそんなふうに笑えるの?
どうしてへらへらとしていられるの?


ああ、そうか……。
陽平にとって、私は、
ただの暇つぶし対象でしかなかったから……。


「……ごめん。まだ怒ってるよな……。俺のこと」
「え……?」


だけど何も言葉を発しない私に、
陽平の顔も曇っていき、目尻を下げて申し訳なさそうな顔をしていた。


演技?
それとも本心?


「あの時は本当に悪かったっ……!
 どうしてももう一度、玲奈に謝りたかったんだ……」

「……」


7年前と違う、彼の言葉が
私の心をひどく動揺させた。
 
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