好きになんか、なってやらない
「……何?」
なるべく冷たい視線を彼に送り、早く帰らせろと言わんばかりの威圧をかけた。
彼の背中の向こうには、まだ先輩たちがゆっくりと歩いている。
岬さんがこっちに気づいているかまでは分からない。
「あの…さ………。これ!」
「え?」
グイと手を差し出され、反射的に手を出してしまったそこには、一枚の紙切れが握らされていた。
何かと思って、その場で開いてみると
080から始まる番号と、アルファベットが連なるラインのIDが書かれている。
「よかったら連絡してほしい。
玲奈ともう一度、ちゃんと話したいから」
「またからかう気?」
「ちげぇよ!!」
冷静な突っ込みに、予想以上に大声での否定。
思わずビクッとして、彼の顔を見上げた。
「からかうつもりなんかない。あの時も……」
「……」
後悔からなのか、ギュッと唇を噛みしめ、悔しげな表情を見せる。
信じられない。
信じない。
だってあの時私は……
「玲奈?」
私の名を呼ぶ、もう一つの声。
その声に反応して、私も陽平も一緒に振り返った。