好きになんか、なってやらない
 
きっと誰よりも
「え?」と言ったような顔をしていたかもしれない。

目を見開いて見上げる私を、岬さんはぐっと肩を自分のほうへ引き寄せる。


「じゃあ、またね。
 同級生くん」


そして嫌味なほど、「同級生」という言葉を強調して、陽平のもとから去ってしまった。


陽平が追ってくることはなくて
駅へ向かっていたはずなのに、外れた道へと進んでいく。


意味が分からない。
岬さんが、私の彼氏だなんて言った嘘が……。


「なんで……あんな嘘言ったんですか」


たとえば、もしこれが昔の状況なら
誰も邪魔するな、的な考えで彼氏だと言い切っていたかもしれない。

だけど今の私と岬さんの関係で
彼がわざわざ同級生に、彼氏だ。と言い切る必要なんてどこにもない。


私の言葉に、ピタリと足を止めて
戸惑う私を見下ろした。



「さあ。……気まぐれじゃね?」



まったく読めない返事。

気まぐれって……何それ。
 
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