好きになんか、なってやらない
2章 意外な一面
 
さて……
今日もいい時間だし、そろそろ切り上げるか……。


時間は22時を過ぎたところ。
週の真ん中から、あまり遅くまで仕事をやると、金曜まで体がもたない。

月末ということもあって、忙しいこともあったが、今日はこれで帰ることにした。


「あ、伊藤。ちょっといいか?」
「え?あ、はい」


突然、課長からの呼び出し。
閉じかけたパソコンを戻し、課長のもとへ行った。


「もう帰り?少し時間ある?」
「はい……大丈夫、ですけど……」
「よかった。じゃあ、すまないが、これを頼む!」
「え……」


ドンと渡された書類の山。

一瞬にして、嫌な予感がした。


「明日の朝一の会議で使うんだが、ファイリングする時間がなくて。
 悪いが、これを人数分閉じて、俺のデスクの上へ置いておいてくれ」

「……わかりました…」


時間がある、と言ってしまった以上、仕方がない。
心の中でため息をつきながらも、その書類の山を受け取った。


ここじゃ広げられないし、どっか会議室借りるか……。


デスクの上に書類を広げるのには、限界がある。

パソコンを閉じて、書類の山だけ両手に抱えると、空いている適当な会議室を借りることにした。
< 8 / 301 >

この作品をシェア

pagetop