好きになんか、なってやらない
2章 意外な一面
さて……
今日もいい時間だし、そろそろ切り上げるか……。
時間は22時を過ぎたところ。
週の真ん中から、あまり遅くまで仕事をやると、金曜まで体がもたない。
月末ということもあって、忙しいこともあったが、今日はこれで帰ることにした。
「あ、伊藤。ちょっといいか?」
「え?あ、はい」
突然、課長からの呼び出し。
閉じかけたパソコンを戻し、課長のもとへ行った。
「もう帰り?少し時間ある?」
「はい……大丈夫、ですけど……」
「よかった。じゃあ、すまないが、これを頼む!」
「え……」
ドンと渡された書類の山。
一瞬にして、嫌な予感がした。
「明日の朝一の会議で使うんだが、ファイリングする時間がなくて。
悪いが、これを人数分閉じて、俺のデスクの上へ置いておいてくれ」
「……わかりました…」
時間がある、と言ってしまった以上、仕方がない。
心の中でため息をつきながらも、その書類の山を受け取った。
ここじゃ広げられないし、どっか会議室借りるか……。
デスクの上に書類を広げるのには、限界がある。
パソコンを閉じて、書類の山だけ両手に抱えると、空いている適当な会議室を借りることにした。