好きになんか、なってやらない
 
「じゃあ、玲奈はどうして否定しなかったの?」
「え?」


確かにそうだ。

散々邪険に扱ってきた岬さんを、彼が「彼氏」だと言い張ってしまったとき、私は「違う!」と否定をしなかった。

本来なら、即否定してないと、おかしい状況だ。


「あの同級生君は、本当にただの同級生?」


私の心を読んでいるかのように、確信をついてくる。

真実を伝えるべきか……。
このままシラを切る気か……。

でもそんなふうに聞いてくるということは、岬さんももう気づいているはず。



「……元彼ですよ。高校ん時の」

「……ふぅん…」



自分から聞いてきたはずなのに、岬さんは興味なさそうに空返事をした。


「男が嫌いなくせに、ちゃっかり元彼とかいるんだな」

「彼と付き合ってた時は、男嫌いなんかじゃないですよ。
 だけど彼のせいで、男の人を信用できなくなりました」


言い方がカチンと来たので、隠さず陽平との本当の関係を話した。


まさか岬さんに、こんなことを言うなんて……。
 
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