好きになんか、なってやらない
8章 彼の心
抱きしめるつもりなんかなかった。
だけど……
気がついたら俺は
彼女を自分の手の中におさめていたんだ―――。
***
玲奈に出逢ったのは3年前。
その時入ってきた新卒の中で、一番目立たないような存在だった。
だけどすぐに分かった。
目立たないし、地味だけど
アイツの持っている容姿は結構なものだ。
シミひとつない肌に、ダメージのない髪。
切れ長の大人びた二重瞼に、通った鼻筋。
いうなれば、大和撫子のような、簡単には人は近づいていけないような、そんな雰囲気も持っていた。
入ってきた新卒の女子たちは、やっぱり一度は俺を見て騒ぐ。
凌太派か、裕樹派か。
だけどたとえ裕樹派の女に声をかけても、ポッと頬を赤らめ、嬉しそうに俺と話す。
それが当たり前だった。
だけど玲奈は違って……
俺にも裕樹にも興味がない。
興味がないふりをしているだけかと思って、話しかけて見ても
頬を赤らめるどころか、これ以上話しかけるなオーラさえ放たれる。
照れているわけでも、
きょどっているわけでもない。
単純に、俺に興味がないのだ。