好きになんか、なってやらない

　
「待って。もう少し考えてみるから」
「いいです。そんな悩んで無理やりたどり着いた答えなんか、余計に信用できないですから」


人間、告白とかなんて、
勢いとタイミングが大事だ。


まさに俺は、今それを逃したわけで……。


「なんかごめん。
　余計、俺のこと信用できなくなった？」


玲奈に信用してもらおうとしているのに
自らそれをぶち壊してしまったので、さすがに少し凹んだ。


玲奈はくるりと振り返ると、じっと俺を見上げる。

真っ直ぐな瞳。
俺とは違う、漆黒の強い瞳だ。



「べつに。まだ信用し始めてないから、騙されたなんて思ってないですよ」



にこりともしない、無表情な答え。


そりゃそうだ。
むしろ、俺はまだマイナスの位置。

分かっていながらも、心の中でため息を吐き、一歩前に踏み出そうとした。

そんな俺に降りかかってくる、次の言葉。



「だけど男の人の中では、一番信用してます」



顔を上げた先には
いつしか見た、ほのかに微笑んだ彼女がいた。