好きになんか、なってやらない
「ごめん。なら、裕樹も誘うから待ってて」
「やった!凌太さんと裕樹さんのコンビ!」
「ラッキー!」
さすがに、女二人と自分だけでは気が引けたみたいで、すぐに柿本さんを誘っている岬さん。
営業部の二人は、合コンの当たりくじを引いたかのようなはしゃぎぶりを見せていた。
柿本さんもすぐに現れて、はしゃぎながらランチへ向かう四人。
その姿が見えなくなって、「ふぅ…」とため息をついた。
「アンタもひどい女だねー」
「べつにそんなことないと思うけど」
去ったと同時に、私のほうに椅子を寄せて耳打ちをしてくる真央。
真央だけは知っている。
岬さんが、本当は私を好きではないことを。
この前、機会があって、彼女だけには話していた。
「それに今、かなり岬さんにたいして怒ってるんで」
「あー、あの時のキ……」
「言わないで」
いくら小声でも「キスされた」なんて言葉は言わないでほしい。
思い出すだけで、イラッとする。
「でもそれってやっぱ、凌太さん、本当は玲奈のことが好きなんだと思うんだけどなぁ……」
「……」
ぽつりと聞こえてきた言葉には、聞こえないふり。
そんなわけない。
もう私は、騙されたくなんかないんだ。