好きになんか、なってやらない
「お疲れー!」
夜は、久々に同期飲みが決行された。
この時ばかりは、普段あまり関わらない部署の同期とも一緒に飲んだりする。
男女合わせて10人ほど。
入社当初は、20人ちょっといたけど、さすがに入社4年目となると、転職などをして人数が半分となっていた。
近況報告とばかりに、みんないろいろ話す。
私はおもに、聞き役。
あまり自分のことを話すのは好きじゃない。
今日も自分は、相槌をうつくらいで終わるんだろうな、と思っていたけど……
「ねー、玲奈はあの時の彼とはどうなったの?」
「は?」
香織からの、突然の振り。
突然すぎて、いったいなんのことを言っているのか、まったく意味が分からなかった。
「あの時の彼って?」
香織の言葉に、他の同期も興味津々に問いただしてくる。
私も意味が分かってなかったので、香織の顔を見返していると、
「前、先輩たちと飲みに行って、帰り男の人に声かけられてたって聞いたよ!
ナンパって言うより、顔見知りっぽかったって聞いたけど」
「………あ…」
そこまで言われて、ようやく分かった。
香織が言いたい、その「彼」と言うのは……
陽平のことだ。