好きになんか、なってやらない
 



「お疲れー!」


夜は、久々に同期飲みが決行された。

この時ばかりは、普段あまり関わらない部署の同期とも一緒に飲んだりする。


男女合わせて10人ほど。
入社当初は、20人ちょっといたけど、さすがに入社4年目となると、転職などをして人数が半分となっていた。


近況報告とばかりに、みんないろいろ話す。
私はおもに、聞き役。
あまり自分のことを話すのは好きじゃない。

今日も自分は、相槌をうつくらいで終わるんだろうな、と思っていたけど……



「ねー、玲奈はあの時の彼とはどうなったの?」
「は?」


香織からの、突然の振り。
突然すぎて、いったいなんのことを言っているのか、まったく意味が分からなかった。


「あの時の彼って?」


香織の言葉に、他の同期も興味津々に問いただしてくる。
私も意味が分かってなかったので、香織の顔を見返していると、


「前、先輩たちと飲みに行って、帰り男の人に声かけられてたって聞いたよ!
 ナンパって言うより、顔見知りっぽかったって聞いたけど」

「………あ…」


そこまで言われて、ようやく分かった。


香織が言いたい、その「彼」と言うのは……


陽平のことだ。
 
< 96 / 301 >

この作品をシェア

pagetop