好きになんか、なってやらない
「どうなるも何も……どうもしてないよ」
いっきに自分の中のテンションが下がっていくのが分かった。
だけどみんなもお酒がまわっているせいで、そんな私の態度に気づくこともない。
滅多に聞くことのない、私の男の話に、さらに興味津々だ。
「えー、何それ!いつの知り合い?運命の再会?」
「ダメじゃん、玲奈ー。アンタには凌太さんがいるんでしょ」
勝手に盛り上がって、突っ込まれる数々。
顔が引きつっているのが分かる。
「ただの高校ん時の同級生。ただ、久しぶりって話しただけだって」
「でも何か渡されてんでしょ?アドレスとか?」
容赦なく、突っ込んでくる香織。
ってか、いったい誰がそんなに注意深く私らの様子を見ていたんだろう…。
いや、全員かもしれない。
だから岬さんもあんなタイミングよく……。
「気のせいだよ。それに本当にみんなが期待するようなこと、何もないから」
「そっかそっか!じゃあ、今度は何かありそうな、のんちゃんの話!!」
唯一、私の不機嫌になっていく様をくみ取ってくれた真央。
その真央が、ささっと話題の中心を私から逸らし、別の人へと向けてくれた。
話を振られたのんちゃんは、いつも爆弾を抱えてくる子。
すぐにみんなは、のんちゃんの話へともちきりになっていた。
「ありがと」
「ううんー。嫌なことは思い出したくないもんね」
こそっとお礼を言うと、真央は笑顔で答えてくれた。
やっぱり同期は、真央だけしか信頼できないや。