好きになんか、なってやらない
「あれー。誰か携帯鳴ってるよ」
しばらくして、トイレから帰ってきた香織が、バックを置いているところからバイブの音を感じ取った。
みんな携帯はテーブルの上に置いているため、鞄に置いている人は数少ない。
ってことは、私の可能性が高いかも……。
言われた通り、鞄のほうへ行き、携帯を取り出すとやっぱり震えていた。
しかも着信。
さらに相手は……
「出ないの?」
じっと携帯を見つめる私に、香織が不思議そうに尋ねてくる。
出たくない。
だって相手は、岬さんだから……。
だけどシカトするのも感じが悪すぎるため、仕方なしに電話に出ることにした。
「ごめん。ちょっと外で話してくるね」
この場ではみんなが騒ぎすぎているため、席を外して静かな場所で話そう。
応答ボタンを押して、ささっとサンダルを履いて外へと出た。
「玲奈、これ……」
すでに受話器に耳をあてていた私は、香織の呼びかけに気づかない。
香織の手には、
私が携帯を取り出した時に一緒に飛び出したであろう、一枚の紙切れが握られていた。