SEL FISH
桜桃梅李
大音量のBGM。メダルの落ちる音。バイトのマイクパフォーマンス。
もう慣れてしまった場所。
「カラオケとか、行かないの?」
可愛いヌイグルミの前で立ち止まると、後ろを歩いていた堂本さんが言った。
「うん?」
「二人。ゲーセンにはよく行くけど、カラオケとか行くのかしらって」
「行ったことない」
アキが続ける。
「祈璃の唯一の欠点は歌うことです」
「欠点のない人間は可愛くないからね」
「あー確かに、いのりちゃんの鼻唄ってたまによく分からない曲の時がある」
「そんなに!?」
ヌイグルミから視線を堂本さんへ逸らす。