SEL FISH

あたしの手元を覗きこむ。

「花見、良いね」

「今週の日曜日から春休みじゃん。行こう!」

「いや、まだ桜咲いてないんじゃ」

「堂本さーん」

「聞いてないし」

飲み物を買った堂本さんが財布をしまいながらこちらに来る。
あたしは持っていた雑誌を見せた。

「日曜日、お花見行こう!」

「えー……いいよ、二人で行ってきたら?」

居心地の悪そうな顔をする。

急にどうしたの、と聞くのは簡単。

でも、あたしの底意地の悪い精神がそれを許さない。

「桜咲いたら、また決めよう」

空気の悪さを感じて、アキが言った。



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