SEL FISH

屋上についたけれど、そこの柵は閉まっていた。まさか、といのりちゃんを見ると、平気で手をかけていた。

「入っちゃダメだと思うんだけど!?」

「大丈夫、堂本さんでも越えられる高さだよ」

「そこ問題じゃないんだけど!」

きいきい言っていても仕方がない。私もそれを飛び越えた。

元々屋上として開いていたのか、きちんとした塀があった。いのりちゃんはビルとビルの間のある一点を見つめていて、私もその先を見る。

朝日が昇ってきた。

光が世界に差す瞬間。私達の狭くて、静かな空間に朝が広がる。

寒さからではなく、心が震えて、鳥肌が立った。



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