SEL FISH
違う、いのりちゃんが優しい。
彼はいのりちゃんは強いと言った。なら、私はいのりちゃんを優しいと言おう。
「私、中学の後半、殆ど不登校だったの」
それは、続かなかった言葉。
いのりちゃんがこちらを見る。通りのシャッターが開く音がした。
人通りが多くなっていく。
「お母さんがすごく心配して、だから、高校はちゃんと行こうって思った」
「すーちゃんママね」
「私にとって、学校は戦場なの。自分の味方は多い方が良い、その為には少ない敵が必要だった」
いのりちゃんは黙ったまま、手を解いたりしなかった。