SEL FISH

振り向いて顔を顰めてみるけれど、アキは首を横に振る。アキが言ったわけではないらしい。

「これからはウチらのこと仕切らないでよね」

本当だ、違う方向から聞こえてくる。
女子の声。

階段の裏側だと思ってたけれど、近くのトイレだったらしく、そこから数人の女子が出て来た。クラスメートだ。

あたしやアキに目もくれず、教室に向かって行く後ろ姿。

「トイレに女子の闇あり」

「それもしかして祈璃の名言?」

「バレた? 才能が滲み出ちゃってた?」

「イノリズムは今日も健在」

女子トイレに近付くと、すぐ入口に一人の女子が蹲っていた。しゃがんで顔を覗き込む。


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