SEL FISH
ぶんぶんと手を振って、いのりちゃんは主張をしているけれど、そんなことしなくても分かるはずだ。
「ちょっと緊急事態!」
それだけ伝えると、窓を閉めた。
「見つけられて良かった。ありがとう、堂本さん」
「見つけたのいのりちゃんでしょう」
「そういえば、藤沢さんってさあ……」
言い淀んで、止める。
いのりちゃんにしては珍しい。
促すのも簡単だけれど、何か考える顔をしていたので、私も黙った。
「やっぱり何でもない」
「そう」
「自分で聞くことにする」
うん。
それは、いのりちゃんらしい。
end.
20150810