SEL FISH

声をかけた方の男子がきょとんとする。その後ろの男子は気が乗らないみたいで、黙っていた。

口を開く前に藤沢さんが声を出した。

「濱さん」

階段を下ってくる濱さん。踊り場に人が密集してしまった。

「も、しかして、ナンパ?」

藤沢さんに小声で聞くのが聞こえる。小さく頷いた藤沢さんを見て、濱さんが目をパチクリさせた。

「ごめんなさい、私たち戻らないきゃ行けないので」

愛想笑いをして、藤沢さんがあたしの手首を掴む。返事も聞かずに階段を上っていく。
上りきったところで、立ち止まった。

振り向いても誰もいない。



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